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青年時代〜いくつかの誘惑〜
なんとか人生をやり直そうと入った高校は、180度転換して男女共学、
ものすごいカルチャー・ショックを受けました。
とにかく何もかもが健全なんです。
ここには僕の過去を知っている人はひとりもいない、
いい友人たちにも恵まれて、見事にやり直すことができたんです。
おっかなびっくり女の子をデートに誘ったりもしましたし、
虚弱体質のこの身体を鍛えようと、運動部にまで入りました。
そうこうしているうち、あまりマジメとはいえない友人たちも何人かできて、
マージャンを覚えてしまったんです。
高校2年の夏休み、
ひとつ年上の人からマージャンに誘われ、その人のアパートへ向かった僕。
行ってみるとその人しかいない、しばらく待ってみたものの、
あとのメンツが誰もこない・・・
ふとこんなことを言ってきた、「きれいな目してるな」
わっはっは、と笑ってごまかしていたら、やけに真剣な表情でまたつぶやく、
「おまえ、肌もツルッツルやな、顔もかわいいし」
こうなるとさすがに顔が赤くなってしまい、何も言えなくなった。
「キス、してもええか?」
ええわけない、強引にはねのけてアパートを飛び出してきちゃった。
そのまま真っ直ぐに家へ帰る気にならなくて、
しばらく公園でボーッとしていました。
あのとき、もし僕が彼のことを受け入れていたら、
たぶん僕は、この世界にのめり込んでいただろうと思います。
その結果、結婚なんかしなかったろうし、子どももできなかったろうな。
結果的に、僕はあれでよかったと思っています。